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独身顆族

多幸感的文章を目指して。あの世とこの世の間で会おう。飽きたら捨ててね。

薔薇を焦がす書店員

お題「読書感想文」

rose

 

ー私の地元の最寄り駅には、ある書店がある。

 

 

 

いつもは寄らないけど、寄ってみようか・・・・・・と、私は自動ドアを足早に抜けてゆく。

 

こんな気持ちになるのは、浅田さんに恋をしているからだろうか。

 

 

 

 

私はとあるきっかけで高校教諭である浅田俊彦と知り合った。

 

 

ぱっと見で惚れた訳ではない。話を交わしていくうちに、父親の面影を感じたからである。

 

 

「そういえばまだ名前聞いてないね、話がはずんじゃってさー・・・」

 

「夢井透子です、25歳です。あの、浅田さんって」

 

「俊彦でいいよ。あ、俊彦さん、かな?(笑)俺もう32だもんなー、夢井さんは透子ちゃん、でいい?透子さん、がいい?」

 

浅田さんはなかなかグイグイくるノリのいい人である。

 

「じゃ、透子ちゃん、でお願いします・・・・ところで、趣味なんてものはあるんですか?」

 

「あ、俺?実はこう見えても本読むの好きなんだよー、おいおい突っ込みはいらないよ、哲学書とか好きなんだよ。あとはショーペン・ハウアーとか好きだったな。」

 

 

 

彼との会話を思い出しながら、目当ての本を探す。

 

 

 

「これだ・・・・・・・・・・・・・」

 

 

私が読むのは、浅田さんとは共通点ゼロの恋愛小説。これだから女は・・・と思うだろうが、頭のいい女を目指してはいるが頭の悪い私にとってはこれが精一杯だ。

 

 

 

「模様替えする人たち」・・・・・・恋愛小説なのに変なタイトルだが、前から読みたかったんだよなぁ、などと思いながら財布を手にレジへと向かう。

 

 

 

 

 

「830円になります。」

 

 

 

 

支払いを済ませ、店を後にする。

 

 

「少しでも浅田さんに近づければ・・・・・・・・・・なぁ。」

 

 

これが乙女心というやつか、と気持ちを噛みしめながら足を鳴らす。

 

 

 

 

それからというもの、浅田さんと親交を深めていくのであったが、なかなか決め手が見つからず、キス止まりであった。

 

 

 

何とも言えないもどかしい気持ちを抱えてふらっと立ち寄ったあの書店。浅田さんと出会って以来、定期的に通うようになってしまった書店。初心忘れるべからず、だろうか、今回も寄る。私はそんな人間であった。

 

 

 

彼と出会ってしまうまでは・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「あれ、この前も来られましたよね?本、お好きなんですか?」

 

 

 

 

いきなりの会話に戸惑う。

 

 

「えぇ・・・・まぁ、そんな感じです。詳しくないんですけどね・・・・・あははは。」

 

 

 

「実は前から気になっていたんですよ、その本。いいですよね。趣味が合うのかな?ね?」

 

 

 

「あ、そうなのかもしれませんね・・・・・・・・・・・」

 

 

 

彼との会話はこれのみであった。

 

 

 

 

「浅田さんと会えないかなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

そんな思いとは裏腹に、ある事件が起きることになる。その時の私には知る由もなかった。私には一ミリも彼が見えていなかったのである。

 

 

 

会社帰りの午後8時、いつものように私は帰路を急ぐ。

 

 

「あれ、何だろうあのゴミ・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

マンションのドアの前にゴミ袋が乱雑に置かれてあった。中身を見るやいなや、私は驚いた。

 

たくさんの焦げついた紙がひしめいていたのである。

 

 

「うわっ・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

うっすらと文字が読める。書店員・・・・・・・・・・・・・・三ッ沢・・・・・・?

 

 

 

突然の着信が鳴る。

 

 

「今日は!いつもよく来られてる夢井さんですよね?み、三ッ沢です!!!この前の本、どうでした・・・・・・・・・?」

 

 

私は言葉が出なかった。

 

 

「あのーーーーーーーーーー、びっくりされました?僕、前からあなたのことが気になってたんですよ。それでちょっと・・・・」

 

 

「・・や、やめて!!!!」

 

私はとっさにその言葉だけを発して電話を切ってしまった。

 

 

 

 

 

次の瞬間

 

 

 

 

目の前に書店員の姿が見えた。

 

 

 

三ッ沢・・・・・・・・・・・・・・です。こんなところまで来てすいません。どうしてもお会いしたくて・・・・・気持ち悪いですよね、僕。すいません!で、でも!どうしても僕、あなたへの思いをぶつけたくて・・・・・!」

 

 

 

パニック状態に陥った私はこう言った。

 

 

「来ないで!!私・・・・・・・・大切な人がいるんです!その人のことを愛してるんです!だからこんなことは」

 

 

 

 

この言葉が彼を触発した事に気づくのにそう時間はかからなかった。

 

「どうして?僕はただ見て待っているだけなんですか?今日は勇気を出して来たのに・・・・・・・・・・?どうしてなんだ、どうしてだよっ!!!!!!」

 

 

 

 

 

その瞬間、私は三ッ沢に覆いかぶさられていた。

 

 

 

 

抵抗も空しく、私は燦々と光る星空を目に、涙を浮かべるだけであった。

 

 

 

 

事を終えた三ッ沢は言う。

 

「すみません・・・・・・・・・・ごめんなさい。自分が自分でなくなってしまったようで、、すみません!!」

 

 

 

私はただゴミ袋に入った紙を見つめているだけであった。呆気にとられていたのだ。

 

 

 

 

 

 

これからの人生、浅田さんとの関係、自分の体・・・・・頭の中で様々な思いを巡らせていたが、現実は真っ白であった。

 

 

 

「あの、この薔薇、よろしかったら・・・・・・・・先に渡すつもりだったんですが・・・・」

 

 

三ッ沢は言う。

 

 

 

 

 

私は無気力に返事を返すことしかできなかった。